資金調達をもとに投資した事業からのリターンが加重平均資本コスト(WACC :Weighted Average cost of capital)を上回ればビジネスは成功しているといえます。
WACCと資本資産評価モデル(CAPM: Capital Asset Pricing Model )を用いて調達資金から利益を算出する方法を、前回、調達資金の運用から利益率を算出する!投資判断の2つの公式 でみてきました。
調達資金からの投資判断の一つの指標として、WACCを上回るリターンが事業から回収できれば良いので、WACCが高ければ高いほど良いというわけではありません。
WACCが低くなるほど企業にとっては越えなければならないハードルが低くなるので有利になります。
WACCを低くする方法
ではWACCを抑えるために、調達資金のうち他人資本(負債)と株主資本(自己資本)の構成をどのようにすれば最適なのでしょうか?
金融機関からの融資のような他人資本に対する利息は、契約であらかじめ決まっています。
一方、株主資本に対する配当は会社の業績によって左右されるので不確実でリスクをともないます。
投資リスクが他人資本に比べて高くなりWACCも上昇します。
また融資に対する利息の支払いには税金による節税効果がありますが、配当の支払いにはありません。
これらを加味すると融資などの他人資本による資金調達を受けるほうがWACCが低くなるので最低水準になるまで利用するのが適切です。
WACCを低くするリスク
しかし、融資などの他人資本の利用度が増加し過ぎると、貸し倒れなどのデフォルトリスク、倒産リスクなどを銀行等が懸念しはじめ負債コストが上昇します。
また、負債比率が拡大すると財務リスクも大きくなるので株主や投資家が受けるリスクも高くなります。その結果、WACCが上昇に転じます。
借入額を決める上での指標として、理論上はWACCが最小となる他人資本と株主資本の構成が重要であり、企業価値を創造する目標でもあります。